漢方治療について
漢方というと効かないとか怪しいと思われる方もいらっしゃると思いますが、まずは風邪の際に受診していただくと少し症状が早くよくなって治りも早くなるような実感をしていただけます。(もちろん、ご体質や病気の時期で実感しづらいこともあります)
食欲低下や便秘、下痢にも効果がある薬もあり、西洋薬と違って食欲がただ増すのではなく美味しく食べられるようになること(補気)や、お通じが整うだけでなく、すっきりと出せることで満足感がでる(理気)ようなお声もいただくことがあります。不思議なことに併せて症状のあった不眠やめまいなど他の効能が発揮されることもあります。(そのおまけは必ずついてくる訳ではなく、西洋薬にお世話になることも多々あります)
体質改善・効くのに時間がかかるというお声に対しては、体質改善としてゆっくり症状をとるよりも、保険診療でもありなるべく早く症状に対して効くような処方(=標治法)を心がけます。ただし、患者さんを含めて病態がこじれているときは体質を根本的に治す方法(=本治法)をすることもまれにあります。体調が良いからとずっと継続される患者さんもいらっしゃいますが、診察や内服が面倒で飲まなくなってしまっても症状がしっかり緩和されていればしばらく大丈夫なこともあります。(症状が出たら、再度受診していただいて同じ処方、体調や症状に変化がある場合はまた処方を考えます)
痛みに対しての利点
痛みに対しての利点としては温めながら治すという西洋薬では難しいことが出来るのが1点目です。(温シップについても効果のある成分は身体を冷やします)もう1点目は『瘀血』という概念的な悪い血がたまったのを改善することで痛みが緩和できることがあります。
安全性・副作用について
天然成分で安全というお声に対しては、残念ながら決してそうではないことを知っていただきたく思います。有名なものでは甘草(かんぞう)という成分による低カリウム血症というイオン(電解質)の異常やむくみ(浮腫)があります。ほか、柴胡や黄芩による間質性肺炎、黄連や黄芩による肝機能障害、山梔子による腸間膜静脈硬化症が知られています。もちろん、めったに起こらない副作用についても生じることがありますがそちらの危険性は西洋薬と同様です。症状が改善されればできるだけお薬を辞めていくことを心掛けています。
副作用については問診と診察でのチェックの他、採血やレントゲン、呼吸機能検査をお願いすることがあることをご了承ください。
当院では西洋医学と東洋医学のダブルの視点で
患者さんのお悩みを包括的な改善へと導きます
当院では西洋医学に加え、東洋医学的な発想を効果的に取り入れた幅広い診療をご提供いたしております。あいまいな症状や原因がよくわからない病態に対してもさまざまな角度からのアプローチを通じて、最大限の改善へと導くよう努めております。
当院の東洋医学に対する考え方について
「東洋医学」や「漢方」といった言葉を聞くと、どこか古臭いイメージもあいまって「本当に効くの?」「効果が弱いのでは?」などといった疑問や不安をお感じになられる方も多いことでしょう。確かに、漢方薬は体質や病気の状態によっては効果を実感しづらいこともあります。しかし、化学合成で人工的に作られた単一成分の多い西洋薬と比べると、もたらされるカバー力は遥かに高く、そのため複数の疾患や病態に対して大きく全体を底上げするような厚みのある改善が期待されます。当院では西洋医学・東洋医学のそれぞれのメリットを最大限活かしながらも、東洋医学が特に強みとする疾患や病態にお悩みの患者さんに対してはその方の状態と十分に考えあわせた上で、さらに効果的な治療のご提案をいたしております。ご不明点やご心配事等ございましたらお気軽に医師やスタッフまでお問い合わせください。
西洋医学と東洋医学のダブルの視点で診るメリットとは―
実は東洋医学が目指すアプローチは西洋医学のそれとは全く異なります。例えば、西洋医学ではまず病名ありきで診断をし、適切な治療を施します。そのためはっきりとした診断名がつかないような病態に対しては効果的なアプローチの仕方がなかなか見つからない弱さがあります。実際の診療現場においても、例えば熱が原因で体に痛みを生じているのに、はっきりとした診断名がつけられない病態も日常的によくあります。そんなときこそ東洋医学的発想におけるアプローチが本領を発揮します。東洋医学では「熱」や「痛み」という症状そのものに対して診断を行うことができます。さらにもともと守備範囲が広い漢方薬は、西洋薬が取りこぼしてしまったような細かなお悩みに対して柔軟にフィットします。双方の利点からよりスピーディーに症状を緩和させ、結果的にさまざまな病態を広く網羅しやすくなるといった大きなメリットが生まれます。
足りない部分を補いあうような処方ができることが漢方薬の最大の強み
漢方薬の処方にあたっては症状や病態から判断するだけでなく、患者さんの体そのものにしっかりとあったものをお出しするよう努めております。各種検査データや症状を精緻に分析し、最適な薬をお選びいたしております。西洋薬と漢方薬の両者の知識に精通した医師が処方を行うため、薬においてもお互いの足りない部分をうまく補いあうような効果が期待できます。
漢方薬の効果的な処方例
- 炎症部は抗生物質で抑えながら、漢方薬で体全体を複合的に整える
- 西洋薬による効果をさらに補助する
- 複数の症状を巻き込むように改善へと導く
漢方薬の使用はあくまでひとつの治療の選択肢として
漢方薬は、あくまでさまざまあるアプローチの中のひとつの選択肢としてのご紹介となります。決して無理強いして患者さんにおすすめするようなものではございませんので、その点についてはご理解いただければと思います。使用する漢方薬についても、当院では保険適用のものを使用いたしております。金額的、回数的な負担に関しても最小限にできるように組みあわせてご提供いたしております。薬の形態に関しても粉や錠剤、カプセルなど飲みやすいものをお出しすることができますのでお気軽にご相談ください。
小さなお子さんも安心してお使いいただけます
小さなお子さんも体質や病態によっては、大人と同じように高い効果が得られることはよくあります。例えば、起立性低血圧などにお悩みのお子さんにとっては漢方が特に有効となることがあります。量の調整も可能ですので、まずは補助的に取り入れてみたいといったご相談も可能です。症状を緩和させたりコントロールするといった感覚で漢方薬をお試しいただくこともひとつの良いアプローチかと思います。
診断や検査の流れについて
その①症状や病態とあわせ、まずは患者さんの体そのものをしっかりと確認させていただきます
望聞問切(ボウブンモンセツ)という東洋医学ならではの五感を意識した考え方を基本軸に、西洋医としての知識も効果的に掛けあわせた診療をご提供いたしております。
東洋医学による診断の仕方
五感を用いながら患者さんを注意深く観察することによって、体質的な異常を見つけ出すことができます。
- 望診(ボウシン):患者さんの肌艶・舌や脈・腹部・体力など目で診てわかること
- 聞診(ブンシン):声や呼吸など耳で診てわかること
- 問診(モンシン):患者さんのお話を直接お聞きすることでわかること
- 切診(セッシン):患者さんの身体に直接触れてわかること
※心の病気(精神科疾患)をお持ちの方へ※
お薬手帳のご持参と主治医の先生の継続的な通院・内服を必ずお願いいたしております。
その②必要に応じて各種検査を加えながら数値的な分析を重ねます
より精度の高い診断へと導くために、必要に応じて各種検査を用います。検査結果から専門的な治療の開始や手術が必要と判断された場合には、迅速に専門医療機関へと連携させていただきます。また、漢方薬による危険な副作用を最大限防ぐためにも必要に応じて採血やレントゲン、呼吸機能検査等をお願いすることがございます。ご了承ください。
その③スピード感をもった診断を大切にしています
漢方薬は効き目が遅いイメージもありますが、当院では患者さんに改善を実感していただくスピード感も大切にしています。1カ月程度をめどにして改善がみられない場合には、再度アセスメントさせていただくことがございます。
その④副作用が強く出る場合もございますので、医師の指示のもと正しく服用ください
西洋薬も漢方薬もともに副作用が出る場合がございます。例えば漢方薬に用いられる甘草(カンゾウ)という成分では低カリウム血症というイオン(電解質)異常やむくみ(浮腫)、柴胡(サイコ)や黄芩(オウゴン)では間質性肺炎、黄連(オウレン)や黄芩(オウゴン)による肝機能障害、山梔子(サンシシ)による腸間膜静脈硬化症などは厳重に警戒しなければならない副作用です。当院では患者さんお一人お一人の体質や現在の体調などを正しく診断の上、事前確認も入念に行わさせていただいておりますが、万が一、服用に際して異変を感じられた場合には至急医師までご連絡ください。症状が改善されればできるだけ早く薬を停止させていただくことも当院では心がけております。
当院は保険内診療でありながらも
より早く的確に症状を緩和するための処方を心がけております
治療に長く時間のかかるイメージがある漢方薬も、当院では適切なスピード感を意識しながらの診療に努めております。従来の西洋薬だけでは難しいとされていた複雑な病態に対しても、漢方薬を効果的に用いることで格段の改善を実感される患者さんも多くいらっしゃいます。痛み止めや抗不安薬、睡眠導入剤、抗うつ薬や広義の抗精神病薬についても処方することが可能です。過去になかなか満足のゆく結果が得られなかったような患者さんこそ、ぜひ一度当院までご相談いただければと思います。古来より脈々と受け継がれてきた東洋医学の古い歴史の中にこそ、その症状に限りなく近い改善への道がきっと見つかるはずです。漢方薬の飲みづらさについては薬剤師さんと随時相談いただければと思います。